はじめに
司法書士の仕事は、個人法務や会社法務のおいて、地味で目立たない作業も多くありますが、その法務手続きのサポート役として、実は欠かせない存在です。
中でも会社登記は、企業家がビジネスを始める際に必ず必要となる手続きであり、重要な役割を果たしています。
本記事では、司法書士による会社登記の基本的な手続きの流れや、デジタル化・IT化の進展とその影響、そして企業家にとっての会社登記の重要性について、名古屋の登記相談所である司法書士HATTORI L.O.がわかりやすく解説していきます。
会社登記に関する基本情報や最新の動向を踏まえ、起業を考えている方や関係者の役立つ情報となれましたら幸いです。
1. 会社登記の基礎知識とその重要性
会社(法人)として活動したいときに、まず必要になるのが「法務局での会社設立登記」です。
会社が法人格を備えて、会社として取引をしたり、利益をあげたり、従業員を雇い入れたり、税金の申告をしていくには、管轄の法務局へ「会社設立登記」を申請し、法人格を備えることがスタートとなります。
また、会社登記とは、会社の設立やその後の運営上の変更に関する情報を正式に(法務局へ)登録する手続きという性質があり、会社の基本情報(会社名、所在地、資本金、代表者、代表者の住所など)を公示する役割を持ちます。(「公示機能」といいます。)
この法務局に登録されている会社の情報を、だれでも「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」などの証明書を取得すれば、どのような会社なのかの最低限の情報が確認できるというシステムです。
また、銀行の融資を受けるときや、管轄官公所の助成金や許認可を受けるときなどでは、会社の登記簿謄本の提出は必須であり、必要に応じて会社の定款や、会社印鑑証明書などまで要求されます。
「人」でいうところの、本人確認資料(運転免許証やマイナンバー、パスポート)や簡易な履歴書(どんな経歴があり、どんな人間なのかのアピール)のような性質に似ているところです☝
☝会社登記の種類
会社登記・商業登記にはいくつかの種類がありますが、代表的なものをいくつか記載いたします。
① 会社設立登記
新しく会社を設立する際に行う登記で、株式会社設立登記、合同会社設立登記のほか、一般社団法人設立登記や医療法人設立登記など、さまざまな法人の種類がありますが、会社登記・商業登記の基礎となります。
② 変更登記
会社の情報(商号や目的、本店所在地や役員の変更など)に変更があった場合の変更登記手続きです。会社の定款の一部を変更(株主総会特別決議)するケースや、役員の改選(株主総会普通決議)のケースなど、さまざまな変更がありますが、商業登記簿の記載事項に変更があった場合は、その変更から2週間以内に法務局へ変更登記手続を申請しなければならないルールです。
ただし、新聞記事になるような上場会社レベルでない限りは、変更後1~3ヶ月程度のうちに登記する会社も実際には多くあります。
③ 増資登記・減資登記
会社の資本金が変わった場合に必要な登記で、企業の財政状況に関わる重要な登記手続きです。特に、会社は外部に対して、「これくらいの資本金の会社ですよ」と示すことで、細かい財政状況は読みとれませんが、ひとつの財政指標になる大切な登記事項なのです。
④ 解散登記
事業を終了する際に必要な登記です。株主総会で解散決議が承認されると会社は解散となりますが、それですべて終了ではありません。
解散後に、会社の残されたプラスとマイナスの財産を「清算」する役割としての「清算人」※通常は代表取締役がそのまま清算人になることが多い※を選任して、換金できるものは換金し、回収できる債権は回収した上で、返済すべき債務を返済するなどして、最終的に財産がプラスマイナスゼロとなると、会社は「清算結了」となり、清算結了登記を行い、すべての会社清算事務が終了し、本当に意味で会社終了となるのです。
2. 司法書士の役割と会社設立登記の手続きの流れ
司法書士は、会社登記における手続きの専門家であり、企業が安心して法的な基盤を整えるためのサポートを行います。ここでは、具体的な会社設立登記手続きの流れを確認していきましょう。
☝会社設立手続の流れ
① 事前相談と計画立案
起業家と司法書士・税理士などの専門家が、会社設立に向けた計画を立てていきます。会社の種類(株式会社、合同会社など)や、業務の内容に合わせた助言が行われます。
たとえば、役員は何名にするか(1人代表でいいのか、中長期的に増える可能性もあるのかで、役員の任期の最善な長さも変わってきます。また、決算期をいつにするかや、資本金をスタート時はいくらにしておくかなども、消費税の課税事業者に初年度からなるかどうかや、早い時期から銀行融資を考えている会社の場合は、より厳密に資本金の額を考えておかなければなりません。
また、会社名義の口座をつくるタイミングや、許認可申請がある場合には、そのスケジュールも考えて会社設立登記を進めていく必要があるのです。
② 定款の作成と公証役場での認証手続き
定款とは、会社の運営に関する基本的なルールを定めたものです。司法書士が定款を作成し、内容をチェックして公証役場で認証手続を行います。
また、定款認証手続のオンライン化(インターネット申請)も普及したため、オンライン申請を採用すれば、収入印紙4万円を節約でき、経費削減効果は抜群です。当事務所ももちろん、オンライン申請対応事務所です☝
定款は、いわゆる公証人のお墨付き(認証)の証明をもらうことで、次の法務局への申請に利用していけることとなるのです。
③ 必要書類の作成と法務局への提出(登記申請)
法務局への設立登記の申請には、定款の他にも、会社設立申請書、本店所在地決議書や代表取締役選定書、役員の就任承諾書、印鑑届(会社の実印届)印鑑カード発行申請などが必要です。
司法書士がこれらを適切に作成し、法務局に提出いたします。
④ 法務局での審査と登記完了
書類の審査が完了すると、会社設立登記が正式に完了し、会社としての活動が可能になります。
また、会社の登記簿謄本や法人印鑑証明書などの証明書も、法務局で取得できるようになるため、会社名義の銀行口座を作成したり、管轄官公所への各種の申請・届出が出来るようになります。
いよいよ会社活動のスタートです☝
3. デジタル化(IT化)と会社登記
近年、司法書士の業務や会社登記の手続きもデジタル化(IT化)が進んでいます。
デジタル化は手続きの簡便化を図り、時間や労力の削減を目指しているわけですが、ここでは、デジタル化の進展と司法書士業務への影響について見ていきましょう☝
☝デジタル登記システム(オンライン登記申請)の導入
法務省では、会社登記のデジタル申請(オンライン申請)システムを導入しており、インターネット上で手続きが完了できるようになりました。これにより、従来の書面手続きに比べて手続きがスムーズになりました。
また、登記完了時の登記簿謄本の請求やその手数料の支払いもすべてオンライン(インターネット)で出来るようになりましたので、一昔のような、各種法務局関連の証明書の申請や取得をするために、法務局へ事務所スタッフが駆け回るような風土は、一気に司法書士業界にはなくなりました。
それに比例して、単純作業のためのスタッフが不要な時代に突入いたしました。
☝電子定款と電子署名
電子定款とは、従来の紙書面により作成された定款ではなく、紙の定款の代わりにすべて電子データで定款を作成し、電子ファイルとして整えたものに電子署名がなされ、公証人により認証されるシステムです。
現状でも、紙による従来型の定款認証手続きは可能ですが、電子申請によるシェアは年々増えており、いずれ数十年後には紙による認証はなくなることは間違いないでしょう。
また、司法書士は、日本司法書士連合会を通して、司法書士であることの電子署名を取得し、従来型の司法書士の実印(職員)による捺印などに代えて、司法書士の電子署名を利用して、各種の電子申請を行う機会が増えてきました。
いずれは、不動産の売買決済などの従来型の「現場で立ち会いを必要とする業務」においても、遠隔でのビデオカメラ方式(及びその他の確認証明方法を付加して)による売買当事者の本人確認や、従来型のアナログでの捺印が必要となる書類への捺印も、電子書面データへ、関連当事者がすべて電子署名を行うことで、書面のない100%電子データのみの登記申請が実現する日も、遠い未来のことではなくなりました。
4. 起業家にとっての会社登記の重要性
会社登記は、単に法的な要件を満たすだけでなく、企業家にとって信頼性や経済活動の基盤を維持していく重要なツールです。
会社登記によって、対外的に「法律上正式に認められた会社(法人)」として認知され、個人事業状態に比べ、より高いレベルで取引先や顧客からの信頼が得られます。
また、資金調達やビジネス拡大においても、登記された会社は有利な立場に立つことができるのです。
☝会社登記の効果と影響
① 信用の確立
会社登記は会社の基本情報を公示し、第三者からの信用を確保してくれます。
② 法的保護
会社登記することで、会社は法的な存在(法人格)として守られます。例えば、裁判になり、その権利や義務が問題になったケースのおいて、法人格を備えている会社は、各種の法律でその権利が守られており、一方、義務も課せられているのです。
③ 経済活動の促進
登記した会社は、融資や投資を受けやすくなり、経済活動の幅が広がります。また、日本国内だけの話にとどまらず、国際経済上も、日本での法人格の取得は非常に大切なツールであり、諸外国からも、日本の法人格を備えている会社は、信用が高く、また、登記簿謄本ではわからない会計上の資産状態も良好であることを満たすと、各種諸外国の取引先との活動も活発に行えるようになるのです。
5. まとめ
司法書士の専門知識を活かした会社登記の手続きは、経済活動を行う企業にとって不可欠なステップです。
また、デジタル化の進展に伴い、手続きの効率化が図られる一方で、適切な書類作成や法的手続きを怠ると、起業家や企業に大きなリスクをもたらします。また、会社を運営していく上で、これからの時代は「デジタル化」を意識して、会社内部でも、会社の電子㊞・電子署名なども積極的に採用していく必要があるでしょう☝
今一度、会社登記の重要でいを認識することで、会社の抱える法務リスクを少しでも削減し、より効果的な事業運営ができることを期待しつつ、これから起業を考えている方にとって、本記事が一助となれば幸いです。
会社登記のお困り事は、名古屋の会社法や会社登記にめっぽう強い司法書士HATTORI L.O.へご相談下さい。
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